お米辞典 【イネの高温障害について】


白未熟粒の発生のメカニズム

(農林水産省)

 

白未熟粒(ここでは乳白粒、心白粒、腹白未熟粒、背白粒、基部未熟粒など胚乳に白濁をもつ未熟粒の総称として用いる)において胚乳の一部が白濁して見えるのは、

受精したモミはまず細胞分裂し、その後、細胞ごとにデンプンがつまる時期に、高温や日照不足などの強い影響を受けると、デンプンが詰まりきらないうちに登熟が終了(胚乳細胞の肥大過程でデンプン粒の発達が不完全になるため)してしまいます。デンプンの詰まらなかった細胞には空気の隙間ができ、これが光の乱反射を生じるために白く見えるのです。

 

胚乳内のデンプン蓄積は、胚乳の中心部から周辺部、背部、基部へと進むことから、白未熟粒の白濁部位の違いは、デンプン蓄積の異常があった時期の違いを反映していると考えられる。

すなわち、胚乳中心部に白濁をもつ「乳白粒」では登熟初中期に、 「背白粒」及び「基部未熟粒」では登熟後期にデンプンの蓄積異常があったと推定される。

 

 

このような白未熟粒の発生が高温によって増大する原因としては、主に、

 

① 胚乳のデンプン合成サイトへのデンプン合成基質(光合成により合成される糖などの栄養分)の供給能力(ソース能力)の不足

② 胚乳が基質を受け入れてデンプンを合成する能力(シンク能力)の低下の2つが考えられます。

 

一般に、高温により登熟初中期の胚乳細胞の分裂・肥大は加速し、粒重の増加速度は上昇するが登熟期間は短縮される。また、こうした登熟過程では、穎果間でのデンプン合成基質の競合が高まり、胚乳細胞の肥大に対してソース能力の不足が引き起こされると考えられます。また、高温によって穎果や茎葉部での呼吸量が増大することもソース能力の低下につながります。

 

一方、高温下では、頴果においてデンプン合成に関連する酵素の活性のピークの時期や組織の老化が早まり、シンク能力も低下すると考えられます。すなわち 高温は ソース能力とシンク能力の双方に影響を及ぼすと考えられています。

 

白未熟粒のタイプ別にその発生要因をみると 乳白粒の発生は 籾数が多い、あるいは低日照条件などデンプン合成基質に対する競合が激しい場合に増加することから、登熟初中期の一時的あるいは局部的なデンプン合成基質の供給不足が大きく関係していると考えられます。

また、玄米の基部に影響がみられる白未熟粒は、籾数の影響は受けにくく、穂肥の増加により減少することから、登熟後期にデンプン合成に関連する酵素の活性の凋落や、デンプン合成基質の輸送組織の老化が関係していると想定されます。

 

現在、高温による細胞の肥大とデンプン蓄積のアンバランスがなぜ起きるのか、あるいは特定のデンプン合成に関連する酵素の発現や活性の低下がどのように関与するのかを明らかにするために、白未熟粒のタイプ別にそのメカニズムの解明や、デンプン合成に関連する酵素の特定、遺伝子の発現解析が進められています。このほか、実際の圃場においては、高温に加えて稲体のソース能力やシンク能力を低下させる気象・栽培要因が存在し、白未熟粒の発生を助長していると考えられます。特に、日射量の不足は、おそらくデンプン合成基質の供給力を低下させることを通じて、乳白粒の発生を助長させていると考えられます。また、近年の食味重視の傾向が窒素の追肥量を減少させ、生育後半に窒素不足となることが白未熟粒発生に関係していると考えられます。特に、玄米の基部に影響がみられる未熟粒や背白粒の発生は、低窒素状態においてより低い温度域でも発生量が増加することから、窒素栄養の状態が強く影響を受けることが示唆されます。また、フェーンや風によっても白未熟粒の発生が助長されます。これら低窒素や水ストレス、風などがどのようにソース能力やシンク能力を低下させるのかの生理的メカニズムについては、今後の解明が待たれるところであります。

 

≪白未熟米≫

精米に白い米が混入するため、品質・販売価格が低下する(見た目の良くない米)  

精米時に粒が崩れやすく、精米歩留まりが低下する(流通上うまみのない米) 

 


 トップページ 商品一覧&ご購入 もち麦辞典 お米の辞典 西条市紹介 会社概要 お問い合わせ 

〒793-0035  愛媛県西条市福武甲1176番地国道11号線) | 電話. 0897-55-2344